余りにも不可思議。
余りにも謎に満ちた夜空を飛ぶ妖怪。
それが彼女だ。
幾度となく人間に退治され、その都度、姿形が異なって伝えられた。
ある伝説では、頭が猿、体が狸、手足は虎、尾は蛇だと言われた。
またある伝説では、頭が猫、体は鶏、尾は蛇だと言われたりもした。
しかしそれらは全て作られた伝説である。本当は、彼女は人前に姿を現すことは無かった。
人間達が怯えて、あれこれ姿を想像しているのを、遠くから見て楽しむだけだった。
それが彼女の日課であった。
それにも飽きて、長い間地底でのんびり住んでいたのだが、今年の
初めの間欠泉騒ぎのどさくさに紛れて地上に出てきた。
地下にいた時に一緒だったムラサ達も地上に出てきて、何やら企んでいるのを見た。
彼女は「久しぶりに楽しめそうだ」と思い、
邪魔してやろうと飛倉の破片に「正体不明の種」を付けた。
正体不明の種は小さな蛇の様な不思議な飛行体で、決まった姿が無い。
他人が見ると、その人が持っている知識で認識できる物に見える。
霊夢達には木片が空を飛ぶ筈が無いと思っていたので、
未確認飛行物体の代表的な形である、円盤UFOに見えた。
ムラサ達には飛倉の破片は、勝手に間欠泉によって散り散りになった様に見えたが、
実は世界にばらまかれたのはこの正体不明の種の仕業であった。
どうも、他人が楽しそうに何かをしていると、
見えないところから邪魔したくなってしまう。それが彼女である。
ムラサ達が何を企んでいたのかは知らないが、失敗したら楽しいなと思っている。
しかし、その正体不明の飛行物体を嬉々として集める人間が現れた。
正体不明に怯えない人間とはどういった人間なのか興味があった。
だからこっそりと後を付けて、時には邪魔したり時にはサポートしたりもした。
結局ムラサが行っていた事は、自分にも益がある事だと知り後で後悔する事となる。
白蓮はそんな自分の復活を邪魔した彼女も受け入れた。
暫くはこの僧侶に付いていくしかないと思う鵺であった。
「東方星蓮船」より
|