Stage 1

 蛍火の行方

  蛍の灯りはいつもより激しく見えたのは気の所為か。
  今宵は永い夜になるだろう。

   BGM. 幻視の夜 〜 Ghostly Eyes

 闇に蠢く光の蟲
 リグル・ナイトバグ
 Wriggle Nightbug

 種族:妖蟲
 能力:蟲を操る程度の能力

   妖夢   さあ、出て来い!
       そこに隠れる闇に蠢くものよ。
  幽々子  妖夢、おいてかないでよー…
   妖夢   何言ってるんですか、夜は短いのですよ!
       早く敵を見つけて斬り潰すのです。
  幽々子  いや、そうじゃなくて……。
   ?   斬り潰すって……

      闇に蠢く光の蟲
       リグル・ナイトバグ
        Wriggle Nightbug
 
  リグル  斬るか潰すかどっちかにしてよ!
   妖夢   さぁ、斬られる前か潰される前に、
       どこに行けば良いのか言いなさい!
  幽々子  妖夢のそれは、夜明けのテンションよ。
       おいてかないで、って言ったじゃない。
       まだ夜は始まったばっかよ。
  リグル  なんなのよ、こいつら。
  幽々子  あれ?
       目の前に大きな蛍が居るわよ。
   妖夢   気付いて無かったのですか……
  幽々子  蛍見も良いわね。
       妖夢、寄り道していかない?
   妖夢   今のどこにそんな時間があるのです!
       虫なんてこの楼観剣で……
  リグル  そうやって話している時間が一番長い!
       蛍様が出て喜ばない奴なんて、
       久しぶりに見たよ!

      BGM. 蠢々秋月 〜 Mooned Insect
 


   妖夢   幽々子さまは、狙いを定めないから
       敵を討つのに時間がかかるのです。
  幽々子  あら、急がば回れ、って言葉知ってる?
   妖夢   あぁ、急いでるんでしたね。
       結局、次はどこに行けば良いのでしょうか?
  幽々子  どう?
       この枝が倒れた方に進んでみない?
   妖夢   そんなんでいいんですか……。
       って、そんなに傾けてたら、手を放す前に
       倒れる向きが決まっていますよ。
  幽々子  くるくるくる〜、っと。



Stage 2

 人間の消える道

  人間の通り道も、真夜中に出歩くものは獣か妖怪位。
  少なくとも人の姿が見える筈も無い。

   BGM. 夜雀の歌声 〜 Night Bird

 夜雀の怪
 ミスティア・ローレライ
 Mystia Lorelei

 種族:夜雀
 能力:歌で人を狂わす程度の能力

   ?   ちょ、ちょっと待って〜!
   妖夢   あんた邪魔だって。
   ?   あなた達には私の歌声が届かないのかしら?

      夜雀の怪
       ミスティア・ローレライ
        Mystia Lorelei
 
 ミスティア もしかして人間じゃ無いの?
  幽々子  夜だというのに、雀の鳴き声がするわ。妖夢。
   妖夢   幽々子さま。
       この鳴き声に惑わされないで下さい。
       これは夜雀の鳴き声。
       最も不吉な音です。
 ミスティア 不吉なんて失礼ね。
       それに、幽霊が出る音よりはなんぼか
       マシでしょ?
  幽々子  ええそうねぇ、比べ物になりませんわ。
   妖夢   否定して下さいよ〜。
  幽々子  妖夢ほら、鳴き声がまた強くなってきたわ。
       何処から聞こえてるのかしら。
 ミスティア ああもう、人間でも人間だった奴でもいいや。
       これから、楽しい妖怪祭りが始まるよ。
  幽々子  さぁ妖夢、先を急ぎましょうか。
   妖夢   え?えぇ、そうですね。そうですけど。
       それにはまず、目の前の鳥を落とさないと。
  幽々子  雀は小骨が多くて嫌いなの。
 ミスティア 通すもんか!

      BGM. もう歌しか聞こえない
 


   妖夢   夜雀が出たって事は、じきに妖怪か何か
       が集まってきます。
       その前にここを去りましょう。
       先を急ぎますよ。
  幽々子  ちょっと待って。小骨が……
   妖夢   さっき、嫌いって言ってたじゃないですか。
  幽々子  妖夢、好き嫌いは良くないわ。



Stage 3

 歴史喰いの懐郷

  一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
  だが里があるはずの場所には、何も、無かった。

   BGM. 懐かしき東方の血 〜 Old World

 知識と歴史の半獣
 上白沢 慧音
 Keine Kamishirasawa

 種族:ワーハクタク
 能力:歴史を食べる(隠す)程度の能力と、歴史を創る程度の能力。

   ?   お前達か。
       こんな真夜中に里を襲おうとする奴は。
  幽々子  あれ?
       変な所に迷い込んでしまったわ。
   妖夢   ここは何処でしょう……?
   ?   迷子の振りしても無駄だ。
       不吉な亡霊達よ。

      戦闘終了後
 
   ?   くそ!
       亡霊がなんで。
  幽々子  酷いわね。
       亡霊を人外扱いして。


   ?   こんな所まで何の用だ?
  幽々子  さっき、攻撃してきたでしょ?
       そのお返し、よ。

      知識と歴史の半獣
       上白沢 慧音
        Keine Kamishirasawa
 
   慧音   ここには何も無い。
       さっさと通り過ぎるが良い。
   妖夢   といっても、実は目的地が分かって
       いないので……。
   慧音   当ても無くふらふらしているのか?
  幽々子  いやいや、妖夢。
       ちゃんと目的地に向っているわ。
       あなたは私の言う通りにすればいいのよ。
   慧音   お前達の目的とは何だ?
   妖夢   この異常な月を元に戻す事。
  幽々子  いやいや、妖夢。
   妖夢   !?
  幽々子  素敵でお腹いっぱいな夜の観光旅行。
   慧音   なんだか物凄く怪しい奴等だな。
       ただでさえ幽霊は怪しいのに。
   妖夢   まて、それは聞き捨てならないな。
       幽霊は怪しくない。
  幽々子  いやいや。
   妖夢   うるさい。
   慧音   ……やはり、お前達は危険そうだな。
       ここから追い出すしか無さそうだ。
       よく分からん奴らだが。
  幽々子  ねぇねぇ妖夢。
       今日は、虫、鳥、と来て次は獣よ。
   妖夢   何が言いたいのですか。
   慧音   ふん、お前達の歴史は全て頂く!

      BGM. プレインエイジア
 
   慧音   お前達が幽霊になる前も、全てだ。
  幽々子  次は龍かしらね。
   妖夢   幽々子さま。次の事考える前に
       目の前の事を考えてください。


   妖夢   獣、って人間を獣扱いしないで下さいよ。
  幽々子  いやいや、妖夢。
       この娘は今は人間の姿をしているけど、
       半分獣よ。あなたみたいね。
       もっとも、人間も獣だと思うので足して
       2半獣かな?
   慧音   くそ、月が不完全じゃなければ
       こんな幽霊なんかに……。
   妖夢   そうそうそう。
       満月を取り戻さないといけないんでした。
  幽々子  さぁ、次は龍料理ね。
       楽しみだわ。妖夢。
   妖夢   幽々子さま、目的地は分かっているって
       言ってましたよね?
       なんか不安になってきましたよ。
  幽々子  でも、龍は鱗が多そうね。



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Stage 4 Powerful

 魔力を含む土の下

  力強い竹の下には、さらに力強い根が張り巡らされて
  いる。表面しか見れないのは愚かな人間と妖怪だけだ。


   BGM.永夜の報い 〜 Imperishable Night.

 普通の黒魔法少女
 霧雨 魔理沙
 Marisa Kirisame

 種族:人間
 能力:魔法を使う程度の能力

  魔理沙  動くと撃つ!
       間違えた。
       撃つと動くだ。私が動く。
   妖夢   何?
       こんなところで遭うなんて珍しい。

      普通の黒魔法少女
       霧雨 魔理沙
        Marisa Kirisame
 
  魔理沙  さぁな。私はいつも通り、迷惑な妖怪を退治
       しているだけだぜ。
   妖夢   迷惑って、誰がこんなことしたか知ってるの?
  幽々子  だからー、普通は判るわ。
  魔理沙  そりゃ判るぜ。
       こんな所に妖気集めた奴が飛んでいればな。
       明日は待ちにまったお月見の日だ。
       今日の月なんてもう見飽きたぜ。
  幽々子  あら、判って無さそうね。
       夜を止めているのは私達。
  魔理沙  お前達だろ?
       だからやっつけに来たんじゃないか。
   妖夢   そこの黒いの。
       後ろの歪な月を見て何も感じないのか?
  魔理沙  もう見飽きたって言っただろ?

      BGM.恋色マスタースパーク
 
   妖夢   現実に目を背けるな。
       こうしている間にもあの歪な月は沈む。
       放っておけば大変な事になるのが
       判らんのか?
  魔理沙  あー?夜が終らない方が大変だぜ。
       竹だって、一日が終らなければ永遠に成長
       するかも知れない。
       それこそ月まで、でもな。
  幽々子  出る杭は打たれるの。
       あれ?打つと動くんだったっけ?
  魔理沙  ああ、動くぜ。
       夜が明けるまで動いてやるぜ。


   妖夢   幽々子さま、逃げましたよ。
       追いますか?
  幽々子  困ったわね。
       私達もあっちに向ってるんだけど……。


  魔理沙  撃ったから動いた。
       さぁ、これからが本番だぜ。
   妖夢   まだやるのか?
       もう勝負あっただろう?
  魔理沙  ふん。
       そっちが二人なら、こっちは二回だ!


   妖夢   とんだ無駄な時間を過ごしてしまった。
  幽々子  幽霊に無駄な時間なんて無いの。
       全ては筋書き通り。
  魔理沙  くそ。
       一体、何だと言うんだ?
  幽々子  一瞬も全て。全ても一瞬。
       あなたと遊んでいる時間も必然よ。
   妖夢   あれ?
       竹林の奥に大きな屋敷が見えます。
  幽々子  妖夢。
       判らない方がおかしいって言ってたでしょ?
       そこに居るわよ。
       探していた龍料理が。



Stage 5

 穢き世の美しき檻

  「穢き所に、いかでか久しくおはせん。」
  そういうと閉ざされた扉は一枚残らず開き――


   BGM.シンデレラケージ 〜 Kagome-Kagome

 地上の兎
 因幡 てゐ
 Tewi Inaba

 種族:妖怪兎
 能力:人間を幸運にする程度の能力

 狂気の月の兎
 鈴仙・U・イナバ
 Reisen Udongein Inaba

 種族:月の兎
 能力:狂気を操る程度の能力

   ?   遅かったわね。
       全ての扉は封印したわ。
       もう、姫は連れ出せないでしょう?
   妖夢   漸く見つかりましたね。犯人が。
  幽々子  これは宇宙鳥。
       まだまだ、焦っちゃ駄目よ。

      狂気の月の兎
       鈴仙・U・イナバ
        Reisen Udongein Inaba
 
   鈴仙   なんだ、幽霊か。
       焦らせないでよ、もう。
       用が無いなら帰ってよ。
       今取り込み中なの。
   妖夢   そうはいかない。
       この月の異変は、お前がやったのだろう?
       そうなら斬る。
       違うのなら斬って先に進む。
   鈴仙   月の異変?
       ああ、地上の密室の術の事?
  幽々子  そうよ。
       これは物凄く迷惑な術だわ。
       即刻やめてもらいます。
       妖夢、さぁ斬っておしまい。
   妖夢   え、えぇ、行きますよ?
   鈴仙   荒っぽい幽霊ね。
       少しは話を聞いてからでも良いじゃない。
   ?   あら、お迎えかと思ったら、幽霊?
       まぁ、お迎えが来れる筈が無いけど。
  幽々子  妖夢、二人目よ。
       これも斬るのよ。
   妖夢   え、えぇ?行きます、の?
   ?   ほら、そんなに苛めちゃ可哀相じゃない。
       月の件は、私の術よ。
       ただ、これも姫とこの娘の為。
       幽霊とはいえ、この位の優しさが無いと
       いけないわ。
   妖夢   お前が犯人か。
       それは斬る相手が一人減った。
   ?   うーん、でも焦っちゃ駄目。
       ウドンゲ、ここはお前に任せたわ。
       間違っても姫を連れ出されないようにね。
   鈴仙   お任せください。斬られはしないけど、
       扉は一つも空かせません。
   妖夢   (なんだ、幽々子さまと大差ないじゃ
        ないか。)
  幽々子  脳が逃げて、鳥が残る。
       妖夢、斬る相手が一人減ったわね。
   妖夢   え? えぇ、斬りますってば。

      BGM.狂気の瞳 〜 Invisible Full Moon.
 
   鈴仙   ふふふ。
       月の事ばっかに気を取られて……。
       既に私の罠に嵌っている事に気が付いて
       いないのかしら?
   妖夢   !?
   鈴仙   貴方の方向は狂い始めている。
       もう真っ直ぐ飛んでいられない!
   妖夢   そういえば、幽々子さま、なんで
       あいつが鳥なんですか?兎じゃぁ…
  幽々子  兎は、皮をはいで食べると、
       鳥になるの。覚えておきなさい。
   鈴仙   嘘を教えるな。
       っつか、無視するな!
       私の目を見ても、まだ正気で居られると
       思うなよ!


   妖夢   うう。目が廻る。
       なんだか気分が悪くなってきた……。
  幽々子  あらあら、これだけ揺られたから、
       人間側が酔ったのね。
       まぁ、安心しなさい。
       次は体に良い物が食べられるわよ。
   鈴仙   なんていうこと。
       思っていたよりずっと強い……。
  幽々子  次は薬膳よ。しかも最後なの。
       龍じゃないのが残念だけど。
   妖夢   幽々子さま。
       なんか知っているんですか?
  幽々子  全然。



Final

 姫を隠す夜空の珠

  永い永い廊下。この廊下は何者かが見せる狂像か。
  近すぎる月の記憶は、妖怪には懐かしく、薄い物だった。


   BGM.ヴォヤージュ 1969

 月の頭脳
 八意 永琳
 Eirin Yagokoro

 種族:月人
 能力:あらゆる薬を作る程度の能力。天才。

   ?   ふふふ。
       無事ついて来てるようね。
  幽々子  追いついた。
       もう逃さないわよ。
   妖夢   ええ、逃しませんとも。


   妖夢   えぇーと。
       何処にいった?
   ?   ここ、ここ。
       さすが半人前ね。
       こんな短時間で見失うなんて。
  幽々子  何やってるのよ。
       その大きな半幽霊は何の為についているの?
   妖夢   尾行の為じゃ無いですよ。

      月の頭脳
       八意 永琳
        Eirin Yagokoro
 
   永琳   まぁ、ここは私が作った偽の通路。
       貴方達が見失うのも無理は無いわ。
   妖夢   偽の通路?
  幽々子  偽の月に偽の星空。
       ほんと、手の込んだ事をしたものね。
   永琳   あら、よく分かったわね。
       あの月が幻影だって。
  幽々子  大昔の月よ、あれは。
       月がまだ天上にあった頃の月。
   妖夢   昔ですか?
  幽々子  古臭い、黴の生えた月。
       今の月には兎はいないものねぇ。
   永琳   あいにく、今でも兎はいるわ。
       月の民も兎も、月の裏でひっそりと
       暮らしているよ。
       結界を張ってひっそりと……。
       そう、幻想郷の様にね。
   妖夢   月の幻想郷?
   永琳   そしてこの幻影の月は、月の記憶。
       古臭く見えるのはその為よ。
   妖夢   で、そんな黴臭い月を持ち出して
       何をしようとしてたの?
   永琳   用事ならもう済んでいるわ。
       満月は月と地上を結ぶ唯一の鍵。
       これさえ無くせば、追手も月から
       地上にやって来れない。
       今頃、偽の地上に辿りついている
       でしょう。そう、黴臭い地上に。
  幽々子  あなたは、犯罪者なのね。
       何かから逃げる者は罪を犯した者。
       身を隠そうとする者は罪を認めた者。
       そして、罪を認めた犯罪者は
       言い訳を始めるわ。
   妖夢   ……。
   永琳   いや別に。
       あんまりにもここが居心地が良かったから、
       月に帰りたくなかっただけよ。
       安心していいわ。
       朝になれば満月は元に戻してあげるから。
   妖夢   幽々子さま、私に何かご指示を。
  幽々子  あら、今頃になって私の言ってたことが
       判ってきたのかしら。
       じゃあ、まずは私の盾になりなさい。
   妖夢   お任せください。
       冥界一硬い盾、ごらんに入れましょう。
  幽々子  気が向いたら援護してあげるから。
   永琳   あはははは。
       盾は外からの力を防ぐ力しか持たない。
       我ら月の民は内なる力に作用させる
       能力を持つの。
       あなたが硬い盾になっている内に、中の
       やわらかい部分から腐っていく……。
       そう、そっちの能天気なお嬢さんからね。
       硬い盾なんて無意味だわ。
  幽々子  妖夢、安心して。
       ナマ物じゃないから腐らないわ。
   妖夢   判ってますよ。
       最初から腐っていることぐらい。
       でも、腐っていてもお守りするのが
       魂魄家の役割なんですよ。
  幽々子  腐らないってば。
   永琳   いつまでその余裕が持つかしらね。
       留処なく溢れる月の記憶。
       これを浴びた地上人で狂わなかった
       人は居ない。
  幽々子  仕様が無いわね。妖夢、狂わないように
       これだけは覚えておくのよ。
   永琳   ああ、人じゃなくて幽霊ね。
       それじゃ腐らないか。
  幽々子  腐りかけが一番美味しいの。
   妖夢   今それを教えられても……。
   永琳   言うわね。
       でも、発酵の能力は神の力。

      BGM.千年幻想郷 〜 History of the Moon.
 
   永琳   貴方達亡霊は神も見捨てたって事よ!


   ?   何遊んでるのよ!
       永琳、私の力でもう一度だけチャンスをあげる。
       これで負けたらその時は……。
       そこの亡霊!
       私の力で作られた薬と永琳の本当の力、
       一生忘れないものになるよ!

      BGM.ヴォヤージュ 1970
 

      NORMAL ENDING No.8
 



Final B

 五つの難題

  解決不能な五つの難題。
  しかし、長い年月と幻想の力は、それらの問題を
  解くのに十分だった。


   BGM.ヴォヤージュ 1969


 永遠と須臾の罪人
 蓬莱山 輝夜
 Kaguya Houraisan

 種族:月人
 能力:永遠と須臾を操る程度の能力


       幽々子さまの言う通りに進む(FinalA)
      > 幽々子さまの言う通りに進む(FinalB)
 
   妖夢   うう。目が廻る。
       なんだか気分が悪くなってきた……。
  幽々子  あらあら、これだけ揺られたから、
       人間側が酔ったのね。
       あそこに見える扉の奥で
       ちょっと休みましょうか。
   鈴仙   ああ、しまった。
       まだ封印が間に合ってない扉があったのか。
   妖夢   大丈夫、ですよ。
       先を急ぎましょう。さっきのを追いますよ。
  幽々子  いいの。
       空いている扉は入れる扉。
       きっとそこには最後の料理が待っているわ。
       まぁ、休憩にはならないかもしれない
       けどね。


   永琳   ああもう。
       こっちに来させちゃ駄目だって言ってるのに。
  幽々子  妖夢。
       行くわよ。
   妖夢   ええ、行きますとも。


   妖夢   幽々子さま。
       見てください、凄い満月ですよ。
   ?   これが本当の満月。
       貴方達は人間でも妖怪でもないみたいね。
       何でこんな所に迷い込んできたのかしら。
  幽々子  妖夢。
       あの月の顔を見るのは忌まわしい事よ。
       今すぐに見るのをやめなさい。
   妖夢   え、えぇ、そうなのですか?

      永遠と須臾の罪人
       蓬莱山 輝夜
        kaguya Houraisan
 
   輝夜   本当の月は忌まわしいもの。
       地上人はその事を忘れて久しい。
       貴方は懐かしい人ね。
       いや、人だった者かな?
  幽々子  まだまだ人のつもりだけど。
       でもね、この娘はまだ半分人なの。
       半分だけでもおかしくなったら困るわ。
   妖夢   幽々子さま。
       月を見ないであいつを見るのは無理です!
  幽々子  心の目で見るのよ。
       その大きな半幽霊は何の為に付いているの?
   妖夢   心眼の為ではないですよ。
   輝夜   楽しいわね。
       穢い人間でも妖怪でもない者か。
       見ていて気持ちのいい位、何にもないのね。
   妖夢   幽々子さま、大変です。
       目を瞑ったら真っ暗です!
   輝夜   少しくらいこの満月みて狂った方が
       いいんじゃない?
  幽々子  見えなくても刀は物を斬れるでしょう?
   輝夜   で、今日はどうしたの?
       幽霊が何の用なの?
  幽々子  珠はね、少しでも欠けると価値は無くなるの。
       それは、永遠に丸のままではいられないからよ。
       でもね、その傷が付いた珠も、転がしている
       うちにまた珠に戻る。
       そういうことでしょう?
   妖夢   あー、急に目を開けると眩しさに目が眩む。
   輝夜   そう、永遠とはそういうこと。
       ワビの世界よ。
       実は私、永遠を操る事が出来るの。
  幽々子  ってことは、今夜を止めていたのも
       貴方かしら?
   妖夢   え?
       幽々子さま、それはその……。
   輝夜   そんな酷い事をするのは私じゃないわ。
       これは信じていいわよ。
  幽々子  まぁ、どうでもいいわそんなこと。
       私は、幻想郷に満月が戻ればそれでいいの。
       朝にはそのうちなるでしょうし。
   妖夢   良く言いますね。
  幽々子  妖夢、これは最後の命令よ。
       目の前の永遠を斬りなさい。
   輝夜   あら、永遠は傷が付いても永遠よ。
       さっきそう言っていたでしょう?
   妖夢   だから斬るんですよね!
       この白楼剣で!
  幽々子  さっきはああ言ってたけど、夜を止め
       ていたのはこいつの仕業よ、きっと。
   妖夢   いや、それは違うと……。
   輝夜   違うって言ってるでしょ?
       まぁいいわ。
       そんなに私と戦いたいのならやりましょう?
       今まで、何人もの人間が敗れ去って
       いった五つの問題。

      BGM.竹取飛翔 〜 Lunatic Princess
 
   輝夜   貴方達に幾つ解けるかしら?


   輝夜   なんて事!
       そう、夜を止めていたのは……、
       貴方達だったのね。

      BGM.ヴォヤージュ 1970
 
   輝夜   貴方達が作った半端な永遠の夜なんて……
       私の永遠を操る術で全て破って見せる。
       夜明けはすぐそこにあるはずよ。
       どう?
       これで永夜の術は破れて、夜は明ける!

      GOOD ENDING No.4
 



Extra

 蓬莱人形

  満月の下の、草木も眠る丑三つ時。
  人間と妖怪の肝試しは、いったい何を恐れる?
  最大の大罪の犠牲者は、いったいどこに居る?


   BGM.エクステンドアッシュ 〜 蓬莱人

 歴史喰い
 上白沢 慧音
 Keine Kamishirasawa

 種族:ワーハクタク
 能力:歴史を食べる(隠す)程度の能力と、歴史を創る程度の能力。

   慧音   待っていたぞ。
       満月の夜にやってくるとはいい度胸だ。
   妖夢   ……肝試しでも、お前は怖くない!
   慧音   あの人間には指一本触れさせない!

 蓬莱の人の形
 藤原 妹紅
 Huziwara no Mokou

 種族:人間
 能力:老いる事も死ぬ事も無い程度の能力

   妖夢   急に……、攻撃が止んだ。
       こういうときが一番怖いです。
   ?   一際異彩を放つ、幽霊の姿。
       こんな満月の下の草木も眠る丑三つ時。
       幽霊は珍しくは無いけど、その確かな姿、
       目立つわね。
   妖夢   うわ、出た!
  幽々子  妖夢、出たわよ。

      蓬莱の人の形
       藤原 妹紅
        Huziwara no Mokou
 
   妹紅   幽霊に、出た、言われてもねぇ。
  幽々子  ……。
   妖夢   なんだ、人間か。
       間違って斬るところでしたよ。
       って、こんな時間に人間?
       やっぱり不自然よ!
  幽々子  ………。
   妹紅   私は最初からここに住んでいるの。
       時間はともかく、貴方達よりは自然だわ。
       で、貴方達は何の用かしら。
   妖夢   私達は肝試しに――って、幽々子さま?
  幽々子  妖夢、そいつに近づいてはいけない。
   妖夢   幽々子さま……。
  幽々子  そいつは、他の人間とは違う。
       触れてはいけない。
       その呪いで穢れてしまう。
       食してはいけない。
       その毒で呪われてしまう。
       何より……。
       私の術が効かない。
   妹紅   なんか、酷く嫌われてるようね。
       初対面なのに。
       それに、いきなり術って、何をかけようと
       したのかしら。
   妖夢   幽々子さまは、人間を死なす事が出来る。
       それが効かないというのは――
   妹紅   いきなり取り殺そうとしたの?
       物騒な幽霊ね。
   妖夢   お前は人間ではないな?
       って、それじゃ幽々子さまが怯えている
       理由が判らないけど。
   妹紅   あいにくだけど、人間よ。
       ただちょっと死なないだけ。
  幽々子  蓬莱人……。
       怖いわ、妖夢。
   妖夢   肝試しに来るまではあれほど平気だった
       のに……、何か変な物でも食べました?
       まぁ、この場は私が何とかします。
       怖いもん無しの幽々子さまが、こんなに
       怯えるものがあるなんて思わなかった。
   妹紅   幽霊と私では、相性が良くないのかな?
       なんだか腹が立ってきたよ。
       もう攻撃開始しようかな〜。
   妖夢   でも、何をそんなに怯えているんですか?
       幽々子さま。
  幽々子  蓬莱の薬を飲んだ人間は不老不死になる。
       その不老不死の人間の生き肝を食すと、
       その人も不老不死になる。
       その生き肝を亡霊が食すと……?
       死ねない亡霊が生まれるわ。
       そして、蓬莱の輪廻は終る。
       成仏も転生も出来ないし、薬も続かない。
       まぁ食べなければいいんだけどね。
   妖夢   じゃあ食べるなー!
   妹紅   全く、ふざけた幽霊達ね。
       もしかしたら、幽霊になるとこんなに
       おかしくなるのかしら?
       死ねない私には確かめ様がないわね。
   妖夢   心配した私が馬鹿でした。
       幽々子さまはやっぱり幽々子さまですね。
  幽々子  食べるかもしれないよ〜。
       目の前の不老不死の生き肝、美味しそうね。
   妖夢   幽々子さまの手の届かない処で始末します。
   妹紅   果たして、死人が私を斬る事が出来るかしら?
   妖夢   仲間を増やす事は出来ないかもしれないけど、
       本当に死なないのか試させてもらうよ。
   妹紅   成仏を忘れた亡霊は新たな生を生まない。
       死ねない人間は色鮮やかな冥界を知らない。
       生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
       死に死に死に、死んで死の終わりに冥し

      BGM.月まで届け、不死の煙
 
   妹紅   死を知らない私は闇を超越する。
       暗い輪廻から解き放たれた美しい弾幕を見よ!